大阪地方裁判所 平成2年(行ウ)17号 判決 1991年3月15日
大阪府吹田市新芦屋上19番10-1306号
原告
林隆也
大阪府吹田市新芦屋上19番10-1306号
原告
林雅子
右二名訴訟代理人弁護士
小田周治
同右
富﨑正人
大阪府吹田市片山町3丁目16番22号
被告
吹田税務署長 松村実
右指定代理人
源孝治
他4名
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が原告林隆也に対し,被相続人佐藤政次郎に係る相続税について昭和63年7月8日付けでした更正のうち,課税価格36,373,000円,相続税額2,100,222円を超える部分及び同日付けでした右更正に係る過少申告加算税賦課決定を取り消す。
2 被告が,原告林雅子に対し,被相続人佐藤政次郎に係る相続税について昭和63年7月8日付けでした更正のうち,課税価格13,096,000円,納付税額913,100円を超える部分及び同日付けでした右更正に係る過少申告加算税賦課決定を取り消す。
3 訴訟費用は,被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同趣旨
第二当事者の主張
一 請求の原因
1 原告林隆也(以下「原告隆也」という。)は,昭和61年11月16日に死亡した佐藤政次郎(以下「政次郎」という。)の相続人であり,原告林雅子(以下「原告雅子」という。)は,政次郎から包括遺贈を受けた者である。
2(一) 原告隆也は,被告に対し,昭和62年5月11日,本件相続に係る原告隆也の相続税(以下「本件相続税(一)」という。)について,別表1の「申告」欄記載の内容で申告をした。
(二) 原告隆也は,被告に対し,昭和63年6月27日,本件相続税(一)について,別表1の「修正申告」欄記載の内容で修正申告をした。
(三) 被告は,原告隆也に対し,昭和63年7月8日付けで本件相続税(一)について,別表1の「更正処分及び賦課決定」欄記載の内容で更正(以下「本件更正(一)」という。)をし,同時に27,000円の過少申告加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定(一)」という。)をした。
(四) 本件更正(一)及び本件賦課決定(一)に対する原告隆也の不服申立ての経緯,内容及び結果は別表1の「異議申立」「異議決定」「審査請求」「裁決」の各欄記載のとおりである。
3(一) 原告雅子は,被告に対し,昭和62年5月11日,本件遺贈に係る原告雅子の相続税(以下「本件相続税(二)」という。)について,別表2の「申告」欄記載の内容で申告をした。
(二) 原告雅子は,被告に対し,昭和63年6月27日,本件相続税(二)について,別表2の「修正申告」欄記載の内容で修正申告をした。
(三) 被告は,原告雅子に対し,昭和63年7月8日付けで本件相続税(二)について,別表2の「更正処分及び賦課決定」欄記載の内容で更正(以下「本件更正(二)」という。)をし,同時に14,000円の過少申告加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定(二)」という。)をした。
(四) 本件更正(二)及び本件賦課決定(二)に対する原告雅子の不服申立ての経緯,内容及び結果は,別表2の「異議申立」「異議決定」「審査請求」「裁決」の各欄記載のとおりである。
4(一) 本件各更正の通知書には更正の理由が記載されていなかった。
(二) したがって,本件各更正は,違法であり,これを前提としてされた本件各賦課決定も違法である。
5(一) 政次郎は,昭和61年3月5日,遺言により,矢島正孝弁護士(以下「矢島弁護士」という。)を遺言執行者に指定した。
(二) 政次郎は,矢島弁護士との間で,同日,遺言の執行を委任内容とし,その報酬額を大阪弁護士会報酬規定に従って算定する旨の委任契約(以下「本件委任契約」という。)を締結した。
(三) 矢島弁護士は,政次郎の死亡後,遺言執行者に就任することを承諾した上,遺言執行者としての職務を遂行し,昭和62年5月11日,その報酬として,原告隆也から2,000,000円,原告雅子から1,500,000円の支払を受けた。
なお,右各金員(以下「本件報酬」という。)は,本件委任契約に基づいて支払われたものであり,矢島弁護士と原告らとの間の合意に基づいて支払われたものではない。
(四)(1) 本件報酬は,民法1021条の遺言の執行に関する費用であり相続財産の負担とされ,相続財産から支払われるものであるから,相続税法11条の2第1項の「当該相続又は遺贈に因り取得した財産の価額の合計額」を算定するに当たっては,これを控除すべきである。
(2) 仮にそのように解することができないとしても,本件報酬債務は,本件委任契約に基づく政次郎の債務であるから,同法13条1項1号により課税価格から控除すべきものである。
(3) 本件各更正は,本件報酬について,右の各点を考慮せずに行われた点において違法であり,これを前提としてされた本件各賦課決定も違法である。
6 よって,原告林隆也は,本件更正(一)のうち課税価格36,373,000円,相続税額2,100,222円を超える部分及び本件賦課決定(一)の取消しを,原告林雅子は,本件更正(二)のうち,課税価格13,096,000円,納付税額913,100円を超える部分及び本件賦課決定(二)の取消しを求める。
二 請求の原因に対する被告の認否
1 請求の原因1ないし3の事実は認める。
2(一) 同4(一)の事実は認める。
(二) 同4(二)は争う。
3(一) 同5(一)の事実は認める。
(二) 同5(二)(三)の事実は知らない。
(三) 同5(四)は争う。
4 同6は争う。
三 被告の主張
1 相続税額算定の根拠
(一)(1) 原告隆也については,本件相続により取得した財産の価額43,789,098円から本件報酬債務(2,000,000円)以外の債務及び葬式費用の合計額5,415,980円を控除すると,課税価格は38,373,000円(国税通則法118条1項の規定により1,000円未満の金額を切り捨てたもの)となる。
(2) 原告隆也は,右取得財産の価額からさらに本件報酬2,000,000円を控除すべきものとして課税価格を算出した上,本件相続税(一)の申告をした。
(二)(1) 原告雅子については,本件遺贈により取得した財産の価額14,596,365円から本件報酬債務(1,500,000円)以外の債務を控除すると,課税価格は14,596,000円(同法118条1項の規定により1,000円未満の金額を切り捨てたもの)となる。
(2) 原告雅子は,右取得財産の価額からさらに本件報酬1,500,000円を控除すべきものとして課税価格を算出した上,本件相続税(二)の申告をした。
(三) 半井石子は,政次郎から3,000,000円の遺贈を受けた。
(四) 本件各更正及び本件各賦課決定は,以上の事実を前提として,別表1・2の「更正処分及び賦課決定」欄及び別表3の「更正処分」欄記載のとおりの計算根拠により,なされたものである。
2 理由附記について
税務署長が更正をする場合において,その更正通知書に記載しなければならない事項は,国税通則法28条2項に規定する事項に限られており,これに加えて更正の理由を附記しなければならないのは,所得税法155条2項及び法人税法130条2項の規定による青色申告書に係る更正のように税法に個別規定がある場合に限られる。
しかるに,相続税の更正通知書に更正の理由を附記すべき旨を定めた個別規定はないから,本件各更正に係る更正通知書に更正の理由が附記されていなくても,何ら違法ではない。
3 本件報酬額の課税価格からの控除について
(一) 民法1006条1項により,遺言執行者を指定するには,必ず遺言によらなければならず,契約によって遺言執行者を指定することはできないから,生前契約により遺言の執行を委任する旨の本件委任契約は無効というべきである。
(二) 遺言執行者に対する報酬は,遺言者がその遺言に報酬を定めたときはそれにより(民法1018条1項ただし書),遺言者がその遺言に報酬を定めていない場合には,家庭裁判所が遺言執行者の申立てに基づいて審判により報酬を決める(同項本文,家事審判法9条1項甲類36号)のであり,このようにして定められた遺言執行者に対する報酬のみが,民法1021条の「遺言の執行に関する費用」として「相続財産の負担」となる。
しかるに,本件報酬は,本件委任契約に基づくものであって,遺言により定められたものでも,家庭裁判所の審判により定められたものでもないから,民法の定める遺言執行者に対する報酬ではなく,民法1021条の「遺言の執行に関する費用」には当たらない。したがって,遺言の執行に関する費用として相続税法11条の2第1項の「相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額」を算定するに当たりこれを控除すべきであるとの原告らの主張は,その前提を欠き失当である。
(三) なお,相続税法11条の2第1項にいう「相続又は遺贈により取得した財産」とは,積極財産のみを指すものと解すべきである。遺言執行者に対する報酬債務は,遺言の発行後,遺言執行者が就任を承諾してはじめて発生する債務であって,相続開始の後に発生する債務である。したがって,同法13条1項2号に定める被相続人に係る葬儀費用のような特別の規定がない以上,遺言執行者に対する報酬については,その性質上,取得財産の価額を算定するに当たってこれを控除することはできないことになる。
四 被告の主張に対する原告の認否及び反論
1 被告の主張1の事実は認める。
2 同2は争う。
次に述べる理由により,相続税の更正通知書には法令上,更正の理由の附記が義務付けられていると解すべきである。
(一) 国民は,自らに課される税がいかなる根拠に基づき課されるものであるか,また,更正される場合には,いかなる根拠に基づき更正されるのかを知る権利を当然に有しており,何らの理由も示さず更正し,過少申告加算税まで賦課することは,適正な手続に違背するといわねばならない。
(二) 税法の総則規定である国税通則法の81条1項3号は,異議申立てに際して「異議申立ての理由」を記載しなければならない旨規定し,また,同法83条3項は,異議申立てに理由があるときは,異議審理庁は,原処分を取り消すことができる旨定めているが,異議審理庁において異議申立てに理由があるか否かを判断するためには,異議申立ての理由が明確なものであることを要するのであって,異議申立人が異議申立ての明確な理由を記載するためには,その前提として処分の明確な理由を知る必要がある。したがって,右各規定は,処分の通知書に処分の理由を記載することをも要求しているものと解すべきである。
このことは,同法87条3項が,「処分に係る通知書その他の書面により通知されている処分の理由」と規定し,処分通知書に処分の理由が記載されていることを当然の前提にしていること,被告自らが処分通知書として作成している定型用紙にも,「この通知に係る処分の理由」という欄が設けられていることからも明らかである。
3 同3は争う。
(一) 遺言執行者に対する報酬は民法1021条の「遺言の執行に関する費用」に当たり,相続財産の負担とされている。したがって,遺言執行者に対する報酬は相続人や包括受遺者の固有の債務ではなく,その支払は相続財産の範囲内で相続財産から確実になされるものである。換言すると,相続人や包括受遺者は,遺言執行者に対する報酬の額に相当する財産については,もともとこれを相続又は遺贈により取得しておらず,また,最終的にもこれを取得することは有り得ないのである。
相続税法13条1項が,課税価格の算定上,同項に規定する債務及び葬式費用を「相続又は遺贈に因り取得した財産」の「価額」から控除すべきものとしているのは,「相続又は遺贈に因り取得した財産」のうち,これらの支払に当てられるべき部分については担税力が認められないからであるが,遺言執行者に対する報酬のように相続財産の負担とされる費用は,相続財産から確実に支払われるのであるから,この費用に当てられる部分については,同項に規定する債務及び葬式費用の支払に当てられるべき部分以上に担税力がないというべきであって,法がその控除を許さないとしていると考えるのは背理である。したがって,民法1021条と相続税法11条の2第1項とを統一的に解釈すれば,同項の「当該相続又は遺贈に因り取得した財産の価額の合計額」とは,相続の対象たる積極財産の合計額から「相続財産の負担」とされる費用を控除した額であると解さねばならない。
そして,本件委任契約に基づく報酬債務は,民法1021条の「遺言の執行に関する費用」であり,「相続財産の負担」とされる費用であるから,本件各相続税の課税価格の算定に当たっては,その性質上,これを控除しなければならないというべきである。
(二) 仮に,(一)の控除が認められないとしても,本件報酬債務は,本件委任契約に基づく被相続人の債務であるから,課税価格の算定に当たり,相続税法13条1項の債務として,これを控除すべきである。
遺言執行者の指定は,遺言によらねばならないが,契約自由の原則からすれば,遺言により遺言執行者の指定がなされている以上,その裏付けとなる当事者間の遺言執行委任という実質的な契約関係まで否定されるべきではないから,本件委任契約は,有効というべきである。そして,政次郎と矢島弁護士との間の本件委任契約から生じた本件報酬債務は,被相続人たる政次郎の債務であるとともに,既に本件委任契約の時点で生じている債務であるから,「相続開始の際現に存するもの」である。
(三) したがって,本件更正(一)は本件報酬2,000,000円を,本件更正(二)は本件報酬1,500,000円をそれぞれ課税価格から控除しなかった点において違法であり,これを前提としてされた本件各賦課決定も違法である。
五 理由附記に関する被告の再反論
1 国税通則法81条1項3号は異議申立書に異議の理由を記載すべきものとしているが,異議の理由としては当該処分が違法又は不当であると記載する程度で足りるものであるから,同号を根拠として,国税通則法が更正の通知において更正の理由が附記されるべきものとしているとすることはできない。
2 また,国税通則法87条3項の「処分の理由」とは,異議決定書に附記された理由(同法84条4項,5項)あるいは青色申告書に係る更正に附記された理由(所得税法155条2項,法人税法130条2項)等の理由をいうのであって,青色申告者以外の者に対する更正の通知書に記載された理由をいうのではない。
3 さらに,国税通則法89条2項は,更正処分に理由が附記されていないことがあることを当然の前提とするものである。
4 なお,被告の更正通知書の定型用紙に「この通知に係る処分の理由」欄を設けているのは,法令上の要請に基づくものではなく,単に便宜上設けているに過ぎない。
第三証拠関係
本件記録中の書証目録と同じであるから,これを引用する。
理由
一 請求の原因1ないし3の事実及び被告の主張1の事実は,いずれも当事者間に争いがない。
二 そこで,次に本件各更正にこれを取り消すべき違法事由があるかどうかについて判断する。
1 理由附記に関する違法について
(一) 請求の原因4(一)の事実は,当事者間に争いがない。
(二) ところで,更正通知書の記載事項について一般原則を定めている国税通則法28条2項は,更正の理由を更正通知書の記載事項として掲げておらず,他方,所得税法は155条2項において,法人税法は130条2項において,それぞれ,青色申告書に係る更正について,「その更正に係る国税通則法28条2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない」と規定して,青色申告書に係る更正については,国税通則法28条2項の例外として特に更正の理由を附記しなければならない旨規定している。しかし,相続税法においては,相続税の更正通知書に理由を附記しなければならない旨の規定はないから,相続税の更正通知書には更正の理由を附記する必要はないというべきである。
なお,原告らは,国税通則法81条1項3号,87条3項を根拠として,同法が更正通知書に更正の理由を附記すべきものとしていると解すべきである旨主張する。しかし,国税通則法81条1項3号は異議申立書に異議申立ての理由を記載することを要求しているが,異議申立ての理由の記載をするために28条2項に掲げられている事項以外に更正通知書に更正の理由が附記されていることが不可欠であるとはいえないし,また,81条1項3号の異議申立ての理由は,更正通知書に更正の理由が附記されていないことを前提とした上,可能な範囲で異議申立ての理由を記載すれば足りるとしているものと解するのが相当であるから,これをもって,国税通則法が更正の理由の附記を要求していると解することはできない。さらに,同法87条3項は,審査請求書には,処分に係る通知書その他の書面により通知されている処分の理由に対する審査請求人の主張を明らかにして審査請求の理由を記載しなければならない旨規定しているが,同項は法令に基づき処分の通知書等に処分の理由が附記されている場合には,審査請求に際しその理由に対する審査請求人の主張を明らかにすべき旨規定しているに過ぎず,すべての処分の通知書に処分の理由が附記されていることを前提とするものではないから,同項をもって,国税通則法が更正通知書に更正の理由の附記を要求していることの根拠とすることはできない。
(三) したがって,更正通知書に理由の附記がなかったことをもって,本件各更正にこれを取り消すべき違法事由があるとすることはできない(なお,国民が当然に更正の理由を知る権利を有するとすることはできず,相続税の更正に理由の附記を要しないと解することにより,手続の適正が害されるとすることもできない。)
2 課税価格の算定に際し本件報酬の額を控除しなかったことについて
(一) 請求の原因5(一)の事実は当事者間に争いはなく,同(二)(三)の事実は弁論の全趣旨により成立の認められる甲第1号証の1,2,原本の存在及び成立に争いのない乙第6号証に弁論の全趣旨を総合すると,これを認めることができる。
(二) ところで,民法1006条1項は,遺言によってのみ遺言執行者を指定し,又はその指定を第三者に委託することができるものとしていると解すべきであるから,遺言者が自己の遺言執行者となるべき者との間で遺言の執行を委任する旨の合意をしたとしても,当該受任者は,当該合意に基づいて遺言執行者の地位を取得するものではなく,遺言による指定がある場合において,遺言者の死亡により遺言が効力を生じた後,遺言執行者に就任することを承諾することによってのみ遺言執行者の地位を取得することができるというべきである。
また,民法1018条1項は,遺言執行者に対する報酬は,遺言者が遺言に報酬に関する定めをしている場合にはそれにより,その他の場合には家庭裁判所が定めるものとしているので,遺言者が自己の遺言執行者となるべき者との間で遺言の執行を委任しこれに対して一定の報酬を支払う旨の合意をしたとしても,受任者は当該合意に基づいて遺言執行者としての報酬請求権を取得することはなく,遺言に基づき,又は家庭裁判所の審判により報酬請求権を取得するものというべきである。
すなわち,遺言執行者としての地位は,その性質上,遺言に基づいてのみ生じ,遺言執行者としての報酬請求権もまた遺言又は家庭裁判所の審判によってのみ生ずると解するのが相当である。したがって,遺言者との間でなされた本件委任契約は,遺言執行に対する報酬請求権の発生根拠とはなりえないというべきであり,その意味では本件委任契約は効力を有しないことになる。
したがって,本件委任契約に基づいて支払われた本件報酬は,民法に定める遺言執行者に対する報酬とはいえないから,本件報酬が遺言執行者に対する報酬,すなわち,遺言の執行に関する費用として相続財産の負担となるとの前提の下,取得財産の価額の合計額の算定に際し本件報酬の額を控除すべきであるとの原告らの主張は,その前提を欠くことになるから,その主張自体の当否を判断するまでもなく,失当ということになる。
また,本件委任契約に基づいて報酬請求権が発生するものではないことは前示のとおりであるから,被相続人政次郎が矢島弁護士に対し本件報酬を支払うべき債務を負担していたとすることはできないから,本件各相続税の課税価格の算定に際し,相続税法13条1項により,本件報酬の額を控除することはできないことになる。
四 よって,原告らの請求は,その余の点につき判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法89条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田畑豊 裁判官 岡久幸治 裁判官 西田隆裕)
<以下省略>